公園から帰ってきた子どものポケットから、石が出てくる。川遊びのあと、バケツの底に小石がたまっている。そうやって集まった石が、珄関の隅の袋に入ったままになっていないでしょうか。

その石、自由研究になります。必要なのは、並べて名前をつけて、調べたことを添えること。それだけで、袋の中の石ころは「自分だけの鉱石図鑑」に変わります。しかも本の形をした箱に収めれば、開いた瞬間に標本が並ぶ、見ごたえのある作品になります。

この記事では、石を拾う場所選びと守りたいルール、家にあるもので調べられる6つの観察ポイント、そして本型の箱で図鑑に仕上げる手順をご紹介します。山形県で見つかる石の話も含めて、山形市・米沢市で探究教室を運営するESTEMがまとめました。材料費はほとんどかからず、低学年から中学生まで、学年に合わせて深められるテーマです。

この記事の要点

  • 石は無料で手に入る、いちばん身近な研究材料です。河原がとくに向いていますが、拾ってはいけない場所もあるので、出かける前にルールを確認しておきます
  • 色・かたち・かたさなど、6つの観察ポイントで調べられます。つめ、10円玉、鉄のくぎがあれば、かたさ比べも家でできます
  • いちばん大事なのは、並べる順番を自分で決めること。「なぜこの順番にしたのか」を書けたとき、コレクションは研究になります

なぜ「石の図鑑づくり」が自由研究に向いているのか

数ある自由研究のテーマの中でも、石には独特の強みがあります。

材料費がほとんどかからないこと。石そのものは拾ってくるものですし、調べる道具も家にあるもので足ります。買い足すとしても、箱とルーペくらいです。

完成の形が最初から見えていること。「箱に石を並べて、名前をつける」というゴールがはっきりしているので、途中で何をすればいいか分からなくなりにくいテーマです。自由研究が毎年途中で止まってしまうお子さんにも向いています。

そして、学年に応じて深さを変えられること。低学年なら色ごとに分けて並べるだけでも立派な作品になりますし、高学年や中学生なら、かたさを測る、できかた(火山からできたのか、砂が固まったのか)で分類する、拾った場所ごとに種類の違いを比べる、といった方向に広げられます。

テーマ選びの段階で迷っている方は、自由研究のテーマが決まらない!子どもの「問い」の立て方もあわせてご覧ください。

ステップ1|どこで拾う?場所選びと守りたいルール

河原がいちばん向いています

石を集めるなら、川の河原が第一候補です。理由は2つあります。

ひとつは、種類が多いこと。川の石は上流のいろいろな場所から流されてきたものなので、狭い範囲を歩くだけで、色も手ざわりも違う石が集まります。もうひとつは、角が取れていて観察しやすいこと。水に削られて丸くなった石は、模様や色が見やすく、手も切りません。

海岸や、工事で新しく削られた斜面のふもとなども石が集まりやすい場所ですが、まずは近所の河原から始めるのがおすすめです。

拾ってはいけない場所があります

ここは出かける前に必ず確認してください。どこでも自由に石を持ち帰っていいわけではありません。

  • 国立公園・国定公園・県立自然公園などに指定された区域。景観や自然を守るため、石や土砂の採取が規制されています。山形県内にも指定されたエリアがあります
  • 天然記念物に指定されている場所。地層や岩そのものが指定されている場合があります
  • 私有地、神社やお寺の境内、工事現場、線路のまわり。持ち主や管理者の許可が必要です

一般の河川敷では、子どもが数個ひろって持ち帰る程度であれば、通常は問題ないとされています。ただし判断に迷う場所であれば、その川や公園を管理している自治体の窓口に問い合わせてみてください。「ここで石を拾ってもいいですか」と電話で聞くところから始めれば、それも研究の一部です。

また、日本地質学会も、貴重な地層や露頭を守るため、乱獲や盗掘をしないよう呼びかけています。ひとつの場所から持ち帰るのは2〜3個まで。これを親子のルールにしておきましょう。※本記事は2026年7月執筆時点の情報をもとにしています。

安全のために決めておくこと

  • 川に入るときは大人が必ず付き添い、深いところには行かない。上流の天気にも注意する
  • 崖の下や、崩れそうな斜面には近づかない
  • 帽子と飲み物を必ず持っていく。暑い時間帯を避け、朝のうちに済ませる
  • 軍手をはめ、動きやすい靴で行く。サンダルは避ける

ステップ2|石を調べる6つの観察ポイント

持ち帰った石は、まずよく洗って乾かします。そのうえで、1個ずつ次の6点を見ていきます。すべての石に同じ項目を書いていくことが大切です。そろった記録があってはじめて、石どうしを比べられるようになります。

観察すること

やり方

記録の書き方の例

明るいところで見ます。水にぬらすと色がはっきりします

白っぽい灰色、ぬらすと黒に近くなる

模様

しま模様、粒々、斑点があるかをルーペで見ます

白い粒が全体に散らばっている

かたち

丸いか、角ばっているか。割れ方に特徴があるかを見ます

平べったくて角が丸い

手ざわり

さわって、ざらざらかつるつるかを確かめます

ざらざらしていて、こすると粉がつく

重さ

キッチンスケールで量り、同じくらいの大きさの石と比べます

45g。同じ大きさの白い石より重い

かたさ

つめ・10円玉・鉄のくぎで引っかいて確かめます(次で詳しく)

つめでは傷がつかず、くぎでは傷がついた

かたさを比べてみる

石のかたさには「モース硬度」といㄆ10段階のものさしがあります。専用の道具がなくても、身近なものでおおよその位置を知ることができます。

引っかくもの

だいたいのかたさ

分かること

つめ

2.5くらい

つめで傷がつく石は、とてもやわらかい部類です

10円玉

3.5くらい

つめではだめでも10円玉で傷がつけば、やわらかめです

鉄のくぎ

4.5くらい

くぎで傷がつく石は、中くらいのかたさです

ガラスのびん

5.5くらい

石でこすってガラスに傷がつけば、その石はかたい部類です

引っかくときは、標本の裏側など目立たない場所で試してください。ガラスを使うテストは必ず大人と一緒に行い、割れないよう厚手のびんを選びます。試したあとは手を洗いましょう。

ちなみにESTEMの授業でも、子どもたちが実際にモース硬度をはかる回を行っています。自分の手で引っかいて「これは3、これは6」と数字が決まっていく作業は、想像以上に盛り上がります。

水と磁石を使ってみる

もうひと工夫として、霧吹きで水をかけてみる方法があります。乾いた状態では地味だった石が、ぬらすと鮮やかな模様を見せることがよくあります。乾いた写真とぬらした写真を並べて貼るだけで、見ごたえのあるページになります。

もうひとつは磁石です。石に磁石を近づけて、くっつくかどうかを確かめます。くっついた石には、鉄を含む成分が入っている可能性があります。全部の石で試して「くっついた・くっつかない」を記録しておくと、それだけで一覧表が1枚できます。

ステップ3|本型の箱で「自分の図鑑」にする

用意するもの

  • 本の形をした箱(100円ショップなどで手に入る、本の形をした収納ボックス)
  • 仕切りになるもの(厚紙、スポンジ、卵のパック、ペットボトルのふたなど)
  • ラベル用のシールか紙、ペン、両面テープ

箱の内側に厚紙で仕切りを作り、マス目を並べます。スポンジをくり抜いてくぼみを作ると、石が動かず、見た目もぐっと標本らしくなります。仕切りの数は、集めた石の数に合わせて決めます。

ラベルに書く4つの項目

石の下や横に貼るラベルには、次の4つを書きます。

  1. 番号(1、2、3…。ノートの記録と対応させます)
  2. 拾った日と場所(「8月4日・○○川の河原」。ここが研究の土台になります)
  3. 特徴(色、かたさ、重さを短く。ステップ2の記録から抜き出します)
  4. 名前(自分でつけた名前と、調べて分かった場合は本当の名前)

自分で名前をつけていいというのが、このテーマの楽しいところです。「ごまふり石」「まっくろ重石」——見た目から思いついた名前を堂々と書いてください。本当の名前が分からなくても、特徴をとらえた名前がついていれば、観察はきちんとできています。

いちばん大事なのは「並べる順番」

ここがこの研究の核心です。箱にどう並べるかを、自分で決めて、その理由を書いてください。

  • 色の順に並べる——白から黒へ、グラデーションになるように
  • かたさの順に並べる——やわらかいものから、かたいものへ
  • 拾った場所ごとに分ける——川の上流と下流で違いが出るか
  • 重さの順に並べる——同じ大きさでも重さが違う理由を考える

石をただ集めて箱に入れただけなら、それはコレクションです。「かたさの順に並べました。なぜなら、かたい石ほどつるつるしていると思ったからです」——こう書けた瞬間に、それは研究になります。分類の基準を決めて、理由を説明する。これは大学の研究でもやっていることと、まったく同じ手順です。

模造紙やノートへのまとめ方は、自由研究のまとめ方は?小学生でもできる発表のコツを解説で書く順番を紹介しています。

山形で見つかる石と、答え合わせの場所

日本地質学会は、全国の都道府県について特徴的な岩石・鉱物・化石を選んでいます。山形県の石として選ばれているのは次の3つです。

  • 岩石:デイサイト凝灰岩——火山灰が積もって固まってできた石です。高畑町でとれる「高畑石」も凝灰岩の仲間で、蔵や石垣の材料として古くから使われてきました
  • 鉱物:ソロバン玉石(カルセドニー)——そろばんの玉のような形をした石です。名前を聞くだけで見てみたくなります
  • 化石:ヤマガタダイカイギュウ——県内で発見された海の生き物の化石です

ここで気づいてほしいのは、石は河原だけにあるのではないということです。高畑石のように、まちの中の蔵の壁や、古い建物の土台にも石は使われています。「この壁の石は何だろう」と見上げてみると、通学路がそのまま観察の場所に変わります。

名前が分からない石が出てきたら、山形県立博物館などの博物館や、学校の理科の先生に相談してみてください。「これは何ですか」と聞きに行くこと自体が、研究の立派な1ページになります。相談に行くときは、石そのものと、ステップ2で書いた観察の記録を一緒に持っていくと話が早く進みます。

ESTEMの探究授業では

探究教室ESTEMは、山形市(やまがたクリエイティブシティセンターQ1内)と米沢市金池で、小学1年生から高校3年生までが通う教室です。科学・アート・歴史・音楽・ものづくりなど、毎月テーマが変わる授業で、子どもたちが自分の「好き」に出会う機会をつくっています。

石は、ESTEMでも繰り返し扱ってきたテーマです。これまでの授業では、こんなことをしてきました。

  • モース硬度をはかる。この記事で紹介したかたさ比べを、実際に道具を使って一つずつ確かめます
  • ペットボトルの中で地層をつくる。砂や土を入れて水と一緒にふり、時間をおくと層に分かれていきます。何億年の出来事が、手元で再現できます
  • 鉄鉢で石を砕いて岩絵具をつくる。すりつぶして粉にした石が、そのまま絵の具になります。理科とアートが一本につながる瞬間です

さらに、拾い集めた石を加工してアクセサリーにし、ガチャガチャで販売した生徒もいました。石を集めるところから始まった興味が、加工の技術に向かい、最後には「どう売るか」まで届いたわけです。ESTEMには価値を生み出してお金を稼ぐ力を育てる起業プランもあり、こうした流れが実際に生まれています。

石の図鑑づくりでやっていることは、実はESTEMの授業の骨格とほとんど同じです。集める、観察する、基準を決めて分ける、人に伝わる形にする。この流れは、テーマが石でも、生き物でも、データでも変わりません。実際にこの手順を繰り返した先で、山形県統計グラフコンクールで入賞した生徒や、超異分野学会で研究のポスター発表に挑戦した小学生も生まれています。

費用は月額の受講料のみで、入会金・教材費はいただきません。実験道具や画材はすべて教室で用意するため、「やめたら道具が無駄になる」という心配がないのも、多分野を試す教室ならではの特徴です。低学年体験プラン(小1〜3)が13,000円、高学年体験プラン(小4以上)が15,000円、探究プランが17,000円、起業プランが授業のみ7,000円・自習室込み16,000円(すべて税込・兄弟姉妹は15%割引)となっています。

授業を受講している生徒は、教室が開いている時間なら授業のない日でも自習室に来られるので、夏休みの作品づくりの続きを教室で進める子もいます。

よくある質問

名前が分からない石はどうすればいいですか?

分からないまま提出して構いません。むしろ「調べたけれど分からなかった」と書くほうが、研究としては正直で価値があります。そのうえで「どこで調べたか」「どこまで分かったか」を書いておきましょう。図鑑と見比べた、博物館に問い合わせた、という過程が残っていれば、名前が確定していなくても評価される内容になります。

低学年でもできますか?

できます。低学年の場合は、観察の項目を「色」「手ざわり」「大きさ」の3つに絞り、色ごとに並べるだけでも十分な作品になります。ラベルも、拾った日と自分でつけた名前だけで構いません。石を洗って、乾かして、並べる。この作業自体を楽しめることが、いちばん大切です。

石は割ってもいいですか?

この研究では割る必要はありません。割ると中の様子が見えるという利点はありますが、破片が飛んで目に入る危険があり、道具もそろえる必要があります。どうしても割ってみたい場合は、必ず大人と一緒に、保護メガネと軍手をつけ、袋やタオルで包んでから作業してください。外側の観察だけでも、6つのポイントは十分に調べられます。

いくつくらい集めればいいですか?

10〜15個が目安です。多すぎると1個ずつ調べきれず、記録が雑になってしまいます。数を増やすより、1個あたりの観察を丁寧にするほうが、良いまとめになります。もっと集めたくなったら、来年の自由研究に続けるという手もあります。同じ場所で毎年集めて比べれば、何年もかけた研究になります。

まとめ|並べて、名前をつけて、理由を書く

石の図鑑づくりで大切なことを整理します。

  1. 出かける前に、拾っていい場所か確認する。自然公園や天然記念物の区域では採取が規制されています。1か所から2〜3個までを親子のルールに
  2. 全部の石に、同じ項目を記録する。色・模様・かたち・手ざわり・重さ・かたさ。そろっているから比べられます
  3. 並べる順番を自分で決めて、理由を書く。ここがコレクションと研究の分かれ目です
  4. 分からなかったことも書く。名前が特定できなかった石の記録は、次の研究の入り口になります

石は、何億年もかけてできたものが、たまたま今日その河原に転がっていたものです。それを拾い上げて名前をつけるという行為は、子どもにとって、世界が自分のものになる体験でもあります。箱を開くたびに「これはあの日に拾った石だ」と思い出せる作品は、夏休みが終わってからもずっと手元に残ります。

探究教室ESTEMでは、こうした「好き」を入り口に、調べて・作って・伝えるところまでを伴走しています。スライムの自由研究マイクラの自由研究もあわせて、この夏のヒントにしていただければうれしいです。山形校・米沢校の見学や体験も受け付けていますので、お気軽にご相談ください。