「スライムは作ったけれど、これって自由研究になるのかな?」——夏休みの終盤、そんなふうに手が止まってしまうご家庭は少なくありません。作るのは楽しいけれど、写真を1枚貼って「できました」で終わってしまいそう、というお悩みです。

結論からお伝えすると、スライムは自由研究にできます。必要なのは、たった一つの工夫だけ。「混ぜるものを1つだけ変えて、比べる」ことです。片栗粉を入れたスライム、塩をかけたスライム、砂鉄を混ぜたスライム。同じレシピから作ったのに、かたさも動き方もまるで違うものになります。その「違い」を記録した瞬間、遊びは研究に変わります。

この記事では、スライムが固まるしくみ、ホウ砂を使うときに必ず守りたい安全ルール、混ぜるもの別の比較実験7つ、そして結果を研究としてまとめるコツまでを、山形市・米沢市で探究教室を運営するESTEMがまとめました。低学年のお子さんから中学生まで、学年に応じて深さを調整できる内容です。

この記事の要点

  • スライムが固まるのは、洗濯のりのPVAとホウ砂が「網目」をつくるから。このしくみを知っていると、変化の理由まで説明できるようになります
  • 変える条件を1つだけに絞れば、立派な比較実験になります。片栗粉・塩・レモン汁・砂鉄など、身近な材料で7通りの実験ができます
  • ホウ砂は口に入ると危険な物質です。ペットボトルなどの飲食物容器で溶液を作らない、下のきょうだいから目を離さない、といったルールを最初に決めてから始めましょう

なぜスライムは自由研究に向いているのか

自由研究のテーマとして、スライムには3つの強みがあります。

1つめは、材料が安くて何度もやり直せること。洗濯のりもホウ砂も数百円で手に入り、1回あたりの所要時間は15分ほど。失敗しても材料が残っているので、「もう一回やってみよう」がすぐにできます。研究にとって、やり直せることは何より大切です。

2つめは、変化が目と手でわかること。「よく伸びるようになった」「水が出てきた」「叩くと固い」——変化を体で感じられるので、低学年のお子さんでも自分の言葉で結果を書けます。実験の結果が数字でしか出ないテーマだと、小さいお子さんは何が起きたのか実感しにくいものです。

3つめは、学年に応じて深められること。低学年なら「入れたもの」と「さわった感じ」を絵日記のようにまとめれば十分。高学年や中学生になれば、伸びた長さをものさしで測る、流れ落ちる時間をストップウォッチで計る、といった定量的な記録に進めます。同じテーマで兄弟が別々の学年の研究に仕上げることもできます。

テーマ選びそのものに迷っている場合は、自由研究のテーマが決まらない!子どもの「問い」の立て方もあわせてご覧ください。

まずは基本のスライム|材料と作り方

用意するもの

材料・道具

分量の目安

選び方・メモ

PVA洗濯のり

50mL

成分表示に「ポリビニルアルコール(PVA)」とあるものを選びます。合成のりでは固まりません

50mL

洗濯のりを薄めるために使います

ホウ砂

小さじ1〜2

薬局・ドラッグストアで購入できます。「ホウ酸」とは別の物質なので買うときに確認を

ぬるま湯

50mL

ホウ砂を溶かすために使います。溶け残った粉は入れずに上澄みを使います

絵の具・食紅

少量

色をつけると変化が見やすくなり、写真も撮りやすくなります

紙コップ・割りばし・使い捨て手袋

必要数

ホウ砂水溶液には、飲み物用の容器を絶対に使いません(後述)

作り方の手順

  1. 紙コップにぬるま湯50mLとホウ砂小さじ1〜2を入れ、割りばしでよくかき混ぜる(これが「ホウ砂水溶液」。溶け残りが底に沈んだら、上澄みだけを使います)
  2. 別の紙コップに水50mLと絵の具を入れ、よく混ぜて色水を作る
  3. 2の色水に洗濯のり50mLを加え、なめらかになるまで混ぜる
  4. 3に1のホウ砂水溶液を少しずつ加えながら混ぜる
  5. 全体がまとまってきたら、手袋をした手で1〜2分こねる

ポイントは、手順4でホウ砂水溶液を一度に入れないことです。少しずつ加えていくと、とろとろ→もったり→ぷるぷる、と状態が変わっていく様子が観察できます。ここが後の実験の土台になります。

どうして固まるの?「網目」で説明できます

洗濯のりに入っているPVAは、とても長いひものような形をした分子です。ひも同士がバラバラに漂っている状態では、自由に動けるので液体のように流れます。

そこにホウ砂の水溶液を加えると、ホウ砂の成分がひもとひもの間に橋をかけるように結びつきます。橋がたくさんかかると、ひもは網のようにつながり、その網目の中に水を抱え込みます。この「水を抱え込んだ網」がスライムの正体です。液体でも固体でもない、ぷるぷるした感触はここから生まれます。

このイメージを持っておくと、実験結果の説明が一気にラクになります。「橋がたくさんかかる=かたい」「橋が少ない=とろとろ」「橋が外れる=ドロドロに戻る」「網目から水が逃げる=縮む」。これから紹介する7つの実験は、すべてこの1枚の絵で説明できてしまいます。

【必読】ホウ砂を使う前の安全ルール

楽しい実験だからこそ、始める前に安全の話をさせてください。ホウ砂は口から入ると体に害のある物質で、日本中毒情報センターの「中毒110番」には、夏休みにあたる7月・8月にスライムやホウ砂に関する問い合わせが増える傾向があると報告されています。

同センターが呼びかけている注意点をもとに、家庭で実験する際のルールをまとめました。実験を始める前に、お子さんと一緒に声に出して確認してください。

  • ホウ砂水溶液を、ペットボトルやコップなど飲み物の容器で作らない。飲み物と間違えて飲んでしまう事故が、子どもから大人まで幅広い年齢で起きています
  • 使い終わったホウ砂水溶液は、スライムを作ったらすぐに捨てる。「あとで使うかも」と置いておかないことが大切です
  • 小さいきょうだいがいる家庭は特に注意する。誤飲事故は3歳以下が多くを占め、上の子のスライムを下の子が口に入れてしまうケースが目立ちます。遊んだあとの片づけまでを実験の手順に含めましょう
  • 口に入れない、目をこすらない、手に傷があるときは触らない。作業中は使い捨て手袋を使い、終わったら石けんで手を洗います
  • スライムは排水口に流さない。新聞紙や袋に包んで、お住まいの自治体のルールに従って捨てます

万が一、口に入れてしまった・大量に飲んでしまったなど判断に迷う場合は、公益財団法人日本中毒情報センターの「中毒110番」に相談できます。電話番号や受付時間は同センターの公式サイトでご確認ください。
※本記事は2026年7月執筆時点の情報をもとにしています。

なお、低学年のお子さんが実験する場合は、ホウ砂水溶液づくり(手順1)だけは大人が担当し、混ぜる・こねる・観察するところをお子さんに任せる分担がおすすめです。危ない工程を大人が引き受けることで、お子さんは安心して観察に集中できます。

混ぜるもので何が変わる?比較実験7つ

ここからが本題です。基本のスライムを多めに作っておき、小分けにして条件を1つずつ変えていきます。大事なのは、一度に1つの条件だけを変えること。片栗粉と塩を同時に入れてしまうと、どちらが効いたのか分からなくなってしまいます。

変える条件

起こること

記録するポイント

ホウ砂水溶液の量を変える

多いほどかたく、少ないほどとろとろになります

何滴入れたところでまとまったか、滴数を数えて記録します

水の量を変える

水が多いほどゆるく、よく伸びるようになります

同じ高さから垂らして、落ちきるまでの秒数を計ります

片栗粉を混ぜる

ゆっくり触るとやわらかいのに、強く叩くと固くなります

指がどれくらいの速さで沈むか、叩いたときの手ごたえを書きます

シェービングフォームを混ぜる

気泡が入って白く不透明になり、ふわふわの手ざわりになります

作った直後と、1時間後・翌日の見た目や感触の変化を比べます

砂鉄を混ぜる

磁石に反応して、動いたり形が変わったりします

磁石を何センチまで近づけると動き出すか、距離を測ります

塩をかける

網目から水が出てきて、スライムが縮んでいきます

出てきた水の量と、残ったかたまりの弾み方を記録します

レモン汁を混ぜる

橋の結びつきがほどけて、ドロドロの状態に戻っていきます

混ぜてから何分で変化が始まったか、時間を計ります

7つすべてをやる必要はありません。2〜3種類を選んで、写真と記録をきちんと残すほうが、研究としてはずっと良いまとめになります。特に印象的な3つを、もう少し詳しく紹介します。

片栗粉|叩くと固くなる不思議な液体

スライムに片栗粉を混ぜる、あるいは片栗粉と水だけを混ぜると、ゆっくり手を入れると沈むのに、勢いよく叩くと表面が固くなって跳ね返されるという不思議な状態になります。この性質はダイラタンシーと呼ばれ、力の加え方によって粒同士の詰まり方が変わることで起こります。

お子さんに手を入れさせて「そーっと」と「バン!」を交互に試してもらうと、必ず驚きの声が上がります。ESTEMでも、山形大学附属小学校さんの学童での出張授業で「ダイラタンシー流体で遊ぼう」という体験を実施し、子どもたちに大好評でした(出張授業の様子はこちら)。触った瞬間の「なんで!?」が、そのまま研究の問いになります。

塩|スライムから水がしみ出す

できあがったスライムを器に入れ、上から塩を多めにかけて置いておきます。しばらくすると、スライムの周りに水がたまり、本体は小さく縮んでいきます。これは、PVAの網目が抱え込んでいた水が外に出ていくために起こる変化です。

面白いのはその後で、水が抜けて残ったかたまりは、元のスライムより弾力が強くなり、床に落とすと少し跳ねることがあります。「入れる前」「10分後」「30分後」の写真を並べるだけで、時間による変化を追った立派な観察記録になります。

レモン汁|固まったものが元に戻る

塩とは逆に、レモン汁を混ぜるとスライムはドロドロの液体に近い状態へ戻っていきます。ホウ砂がかけていた「橋」が、酸によって外れてしまうためです。

この実験の価値は、「固める」と「戻す」の両方を体験できるところにあります。片方だけでなく両方を試すと、「橋がかかると固まる、外れると流れる」という仮説を、自分の手で2回確かめたことになります。研究としての説得力がぐっと増します。

さらに発展させたい高学年・中学生には、冷蔵庫で冷やしたスライムと室温のスライムで伸び方を比べる、という温度の実験もおすすめです。

「作っただけ」を「研究」に変える3つのコツ

ここまでの実験を、提出できる形に仕上げるためのコツを3つお伝えします。

コツ1|変える条件は、一度に1つだけ。比べたいもの以外は、洗濯のりの量も、こねる時間も、置いておく場所もそろえます。「同じにするもの」と「変えるもの」を最初にノートに書き出しておくと、迷いません。

コツ2|「はかる」を必ず1つ入れる。「やわらかかった」だけでは感想文になってしまいます。伸ばして切れるまでの長さ(cm)、傾けた板を流れ落ちる時間(秒)、10cmの高さから落としたときの跳ね方。ものさしとストップウォッチがあれば、感想は数字になります。低学年なら「指が何本入ったか」でも十分です。

コツ3|予想を先に書いておく。実験の前に「たぶんこうなると思う」を書いておくと、結果が当たっても外れても書くことが生まれます。むしろ予想が外れたときのほうが、良い研究になります。「なぜ外れたのか」を考える過程こそが、探究そのものだからです。

模造紙やノートへのまとめ方に迷ったら、自由研究のまとめ方は?小学生でもできる発表のコツで、書く順番と見せ方のテンプレートを紹介しています。頑張った研究をコンクールに出してみたい方は、小中学生のコンクール特集もあわせてどうぞ。

ESTEMの探究授業では、こう学んでいます

探究教室ESTEMは、山形市(やまがたクリエイティブシティセンターQ1内)と米沢市金池で、小学1年生から高校3年生までが通う教室です。科学・アート・ものづくり・お金・映像など、毎月テーマが変わる授業で、子どもたちが自分の「好き」に出会う機会をつくっています。

スライムは、ESTEMでも実際に扱ってきたテーマです。2025年3月には、西公園パークセンターで年中さん〜年長さん向けのイベント「ひかる!のびる!スライムをつくろう」を開催しました。ブラックライトを当てると光るスライムや、ふわふわでよく伸びるスライムを親子で作っていただき、「家でなかなかできない体験ができてよかったです」といった声をいただいています(イベントの様子はこちら)。

ESTEMが大切にしているのは、作って終わりにしないことです。「なぜそうなったんだろう?」と問いを立て、条件を変えて確かめ、人に伝わる形にまとめる。この流れを繰り返した先で、実際に山形県統計グラフコンクールで入賞した生徒や、超異分野学会で研究のポスター発表に挑戦した小学生も生まれています。

費用は月額の受講料のみで、入会金・教材費はいただきません。実験道具や画材はすべて教室で用意するため、「やめたら道具が無駄になる」という心配がないのも、多分野を試す教室ならではの特徴です。

コース

対象

月額(税込)

低学年体験プラン

小学1〜3年生

13,000円

高学年体験プラン

小学4年生以上

15,000円

探究プラン

興味を深めて形にしたい方

17,000円

兄弟姉妹で受講される場合は、各受講料が15%割引になります。授業を受講している生徒は、教室が開いている時間なら授業のない日でも自習室に来られるので、自由研究の続きを教室で進める子もいます。

よくある質問

小学1年生でもできますか?

できます。ただしホウ砂水溶液を作る工程は大人が担当してください。お子さんには「混ぜる」「こねる」「さわって気づいたことを言う」を任せるとよいでしょう。低学年の場合、記録は文章でなくても構いません。実験前と実験後の絵を並べて描き、気づいたことを一言添えるだけでも、立派なまとめになります。

1日で終わりますか?

実験そのものは半日あれば終わります。ただし、まとめる時間を別に半日ほど見ておくと安心です。2〜3種類の比較実験なら、午前中に作って観察し、午後に写真を整理して模造紙にまとめる、という1日の流れが現実的です。塩の実験のように時間経過を見るものがある場合は、待ち時間に他の実験を進めると効率的です。

スライムが固まりません。失敗ですか?

失敗ではなく、それ自体がデータです。よくある原因は、洗濯のりがPVA入りでない、水を入れすぎた、ホウ砂水溶液が足りない、混ぜ方が足りない、のいずれかです。「なぜ固まらなかったのか」を考えて条件を変え、次に成功した記録まで書けば、それは研究として最も価値のある部分になります。うまくいかなかった回こそ、写真を撮って残しておいてください。

ホウ砂を使わない方法はありますか?

コンタクトレンズ用の洗浄液と重曹を使う方法などが知られていますが、洗浄液にもホウ酸系の成分が含まれている製品が多く、口に入れないという原則は変わりません。市販のスライムキットを使う場合も、必ず対象年齢を守り、遊んだあとは片づけるようにしてください。どの方法をとる場合でも、この記事の安全ルールは同じように当てはまります。

まとめ|混ぜて、比べて、考える

スライムを自由研究に仕上げるために大切なことを、あらためて整理します。

  1. しくみを一言で持っておく。PVAのひもにホウ砂が橋をかけ、網目が水を抱え込む。この一枚の絵で、7つの実験すべてを説明できます
  2. 安全ルールを先に決める。飲食物の容器を使わない、使い終わった溶液はすぐ捨てる、小さいきょうだいから目を離さない
  3. 変える条件は1つだけ。片栗粉、塩、レモン汁——1つ変えるごとに、比べられる結果が1つ増えます
  4. 予想を先に書き、何かを「はかる」。感想が数字になった瞬間、遊びは研究になります

お子さんが「なんで?」と言ったら、それがもう研究の始まりです。答えをすぐに教えず、「どうやったら確かめられるかな?」と返してみてください。そこから先は、きっとお子さんのほうが夢中になっていきます。

探究教室ESTEMでは、こうした「なんで?」を毎月違うテーマで体験しながら、自分の好きを見つけていく授業を行っています。山形校・米沢校の見学や体験も受け付けていますので、お気軽にご相談ください。